そう思われている方も多いかと思います。
そこで布マスクに接着芯を使用することについて、メーカー様に問い合わせてみました。
結論から言います。
メーカー様の回答は「布マスクに接着芯を使用することはおすすめしない」でした。
経緯とお詫び
そもそもは、使い捨てマスクの在庫が切れるので布マスクをつくってみようと思ったのが事の発端でした。
布マスクは不織布マスクに比べると新型コロナウイルスの感染予防効果は低いと言われていますが、人に感染させないために一定の効果があると考えています。
わたしは布マスクを手作りする際に、型くずれ防止のために接着芯を使用してみてみてはどうかと考えました。気休め程度ですが、フィルター効果も少しは期待できるのではないかとも。
実際に接着芯を使ったマスクを作り記事を公開しました。
公開後まもなく、このようなご意見をいただきました。
「接着芯の糊には有害物質が含まれているのでマスクの使用には向かない」
自分なりに調べてみるとたしかに接着芯にはいろいろと問題があるかもしれないと思いました。
しかし、その後違うご意見もいただきました。
「接着芯の使用は問題ない」
「糊の素材によっては問題ない」
等々・・・
まず
安全性についてよく確認せずに、接着芯を使ったマスク作りの情報を発信したことについて、深くお詫び申し上げますm(_ _)m
その上で
結局、マスクに接着芯を使用することは問題があるのか?それとも問題ないのか?
いろいろと調べてみましたが「素人では判断できそうもない」というのが最初の結論でした。
そこで、接着芯を販売しているメーカー様3社に問い合わせてみた。
というのが経緯です。
なぜ接着芯はマスクの使用に向かないのか?
問い合わせた結果、3社の回答はいずれも「接着芯をマスクに使用することはおすすめしない」でした。
では
なぜ接着芯はマスクでの使用に向かないでしょうか?
メーカーの回答には2つの理由がありました。
・接着芯の糊には有毒物質ホルムアルデヒドを含んでいる。
・接着芯は「衛生用品」ではなく「手芸用品」である。
接着芯の糊に含まれる有毒物質ホルムアルデヒド
まず1つめ、接着芯の糊は有毒物質「ホルムアルデヒド」を含んでいます。
今回問い合わせした3社いずれの接着芯の糊にも、ホルムアルデヒドが含まれているという回答でした。
ホルムアルデヒドとは、発がん性物質を含む有毒物質であり、シックハウス症候群の原因の1つとしても知られています。
そんな恐ろしいものをマスクの一部に使用するなんて!?と衝撃を受ける方もいると思います。
一方でホルムアルデヒドは、一部の魚類やしいたけなどにも含まれているのです。要するにわたしたちが体内に取り入れている可能性のある物質です。
問題はホルムアルデヒドの含有量になります。
肌に触れる繊維製品(くつした、寝衣、手袋等)における厚生労働省が定めるホルムアルデヒドの含有量基準値は以下になります。
肌に触れる繊維製品では75ppm以下
含有量がこれ以下であれば肌に触れる繊維製品などに使用できるということです。
ちなみに問い合わせた3社のうち、2社の接着芯は、基準値75ppm以下であるとのことでした。1社については含有量は不明という回答でした。
もう一つ数値をあげます。
「日本衛生材料工業連合会(JHPIA)」の「マスクの自主基準」というものにはこのように書かれています。
ホルムアルデヒドは、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」(昭和 48 年 10 月 12 日法律第112 号)に定められた、別表第1中ホルムアルデヒドの項、家庭用品の欄において繊維製品のうち下着等の検出基準(75ppm 以下)に適合すること(出生後24月以内の乳幼児用を除く)。
一般社団法人 日本衛生材料工業連合会 | マスクの自主基準
マスク業界においてもホルムアルデヒドの基準値は75ppm 以下となっています。
つまり、結論としては、接着芯の糊の部分にホルムアルデヒドが含まれていることが問題ではなく、その含有量が基準値以下であるかどうかが重要です。
接着芯のホルムアルデヒド含有量が75ppm 以下であれば、接着芯単体としてマスクの基準値に適合していると言えるわけです。
接着芯は「衛生用品」ではなく「手芸用品」
メーカーが接着芯をマスクに使用することをおすすめしないもう1つの理由は、接着芯は衛生用品ではなく手芸用品であるからと言われました。
マスクというのは衛生用品です。実際にホコリやチリ、花粉やウイルス飛沫を防ぐ効果があるのかフィルタ性能の試験を行い、長時間マスクをつけることで人体に影響がないかどうかなどを検証しているはずです。
一方の接着芯は、あくまでも手芸用品です。マスクに使用されることは考慮していません。
口元を長時間覆い、呼吸が行われることで人体にどういう影響があるのか?一切の検証がされていないということです。
検証ができていないものを、メーカーが「大丈夫ですよ」と軽々しく言えませんということでした。
もしも何か問題が起きた場合、責任問題、訴訟問題になりかねません。当然の回答だと思います。
まとめるとこうなります。
接着芯は、衛生用品ではなく手芸用品なので、マスクの使用には向かない
接着芯メーカー様からの製品に対する回答まとめ
メーカー様からの回答は3社とも「接着芯をマスクに使用することはおすすめしない」でした。理由は上記のとおりです。
販売している製品について問い合わせた、糊の素材、ホルムアルデヒドの含有量に対する回答は以下のとおりでした。
糊の素材 | ホルムアルデヒドの含有量 | |
A社 | ポリエチレン系の樹脂 | 基準値以下 |
B社 | ポリエチレン系の樹脂 | 基準値以下 |
C社 | EVA樹脂 | 不明 |
※注意:問い合わせた商品に対するメーカーの回答がこういう結果だったということであり、ポリエチレン系樹脂の商品はすべて基準値以下、EVA樹脂の商品はすべて含有量がわからないという意味ではありません。
ご参考までに基準値以下と言われた接着芯はこちらの2つでした。
接着芯の代用品はあるのか?
接着芯の代用品となるものはあるのでしょうか?
メーカー様にもお聞きしてみましたが、代用となる商品はないという回答でした。
裏生地の内側にガーゼのような布を縫い合わせておくという方法もあるかとは思います。
またコーヒーフィルター、レンジフードフィルター、クリーナーフィルターなど、世の中にフィルターと名前がつく製品はいろいろとありますが、本来の使用用途とは異なるためどんな影響があるかはわかりません(接着芯と同様です)。使用にはくれぐれもご注意ください。
ソライロノート
もし接着芯を使用するのであれば、ホルムアルデヒドの含有量については調べておいたほうがいいかと思います。
ただしホルムアルデヒドが基準値以下であれば安全なのか?と言うと、「衛生用品ではなく手芸用品」なので安全の検証ができていないので、「接着芯をマスクに使用することはおすすめしない」というのがあくまでもメーカー側の回答になります。
衛生用品である市販のマスクが手に入らないからこそ、代用品を用いて手作りしている方も多いと思われます。布マスクを作られる方、使われる方がどのように考えるか次第かと思います。わたし自身は接着芯の使用をやめました。
以上「布マスクに接着芯を使用することについて」メーカー様に問い合わせた結果でした。ご参考になればと思います。
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