山パスタで最も失敗しやすいのはパスタの茹で過ぎです。茹で過ぎたパスタはもっちりを通り越してベチャベチャになってしまいがちです。特に標高が高い山ではこの傾向が強いです。
パスタを茹で過ぎてしまう原因はいろいろあるのですが、その1つとして水の量が多すぎることです。茹で汁を残さないように水がなくなるまで茹でることで、アルデンテ以上に茹でてしまいベチャっとなってしまうのです。
そこで最適な水の量を算出するには、火加減が重要になります。
水の量と火加減は車の両輪のようなもので、火が強すぎれば水の蒸発量が多くなるため水が足りなくなります。反対に火が弱すぎれれば、水の蒸発量が少なくなるため水が余り過ぎます。
今回は最適な水の量を算出する上で火加減について、データを取得しながら考えてみました。
火加減と水の蒸発量の実験
「火の強さ」を客観的に定義することは難しいですが、今回はお湯が沸騰するまでにかかる時間を火加減を表す指標にしてみました。
今回測定した条件は以下になります。
【水の量】100cc
【燃料】ガス
【使用器具】trangia メスティン TR-210、PRIMUS ウルトラ・スパイダーストーブ、PRIMS GAS CARTRIDGE IP-110
【測定時間】火にかけてから10分
【フタ】締めたまま
【実験方法】量りの上に水を入れたメスティンをのせた状態で火にかけ、水が蒸発して減る量をリアルタイムで測定する。
測定結果
1.沸騰時間:2分
1分間の平均蒸発量:7.1cc/分
沸騰後5分間の蒸発量:35.5cc
※強めの弱火くらい
2.沸騰時間:2:30分
1分間の平均蒸発量:5.9cc/分
沸騰後5分間の蒸発量:31.5cc
3.沸騰時間:3:00分
1分間の平均蒸発量:4.7cc/分
沸騰後5分間の蒸発量:25.5cc
4.沸騰時間:3:30分
1分間の平均蒸発量:3.9cc/分
沸騰後5分間の蒸発量:21.0cc
5.沸騰時間:4:00分
1分間の平均蒸発量:3.4cc/分
沸騰後5分間の蒸発量:17.5cc
6.沸騰時間:4:30分
1分間の平均蒸発量:2.8cc/分
沸騰後5分間の蒸発量:15.5cc
※かなり弱火
考察
山でパスタを茹でる場合、基本は弱火です。そこで弱火を6段階に分けて測定してみた。
一口に弱火と言っても、人それぞれで実際の火の強さはおそらく異なるでしょう。沸騰後5分間の蒸発量をみると、1と6で20ccの差があります。同じ弱火でもこれだけ水の蒸発量が変わってしまうのです。
一般にガスバーナーを弱火に設定しようと思ったらおそらく1か2くらいの強さにする人が多いのではないでしょうか。これでも十分弱火なのですが、バーナーはもっと弱火にできます。
では、どの強さが山パスタに合っているのでしょうか?
もっとも効率的になのはギリギリ沸騰するレベルです。上記6、いわゆる「とろ火」というやつです。ガスバーナーで調節できるもっとも弱い火(ただし火が安定していること)と考えていいと思います。
そして重要なのは、一口に弱火と言ってもその火加減は人によって千差万別ですが、最も弱い弱火となれば多くの人で共有しやすいのではないでしょうか。しかも水の蒸発量も抑えられるので資源効率がよいです。
もちろんこのギリギリ沸騰するレベルのとろ火でもパスタを茹でることは可能です。
ソライロノート
今回のソライロポイントはこれ。
山でパスタを茹でるときは、最も弱いとろ火で!
※お米を炊く時と同じように沸騰するまでは強火で構いません。
これで火加減はバッチリのはず!
「水100ccをとろ火で沸騰させた場合(フタあり)、1分間に3ccの水が蒸発する」ことを頭のスミに入れておくと、必要な水の量を算出するときの参考になるはずです。
【追記】ただしこれはメスティンの話。メスティンは密封性および熱伝導率が非常に高くパスタを茹でるのにとても適しています。一方フライパンの場合は、中心に熱が集まりやすく、フタをしてもメスティンほどの密封性が得られないため、よりも強い火力が必要になるのでないかと考えています。フライパンに関しては別途実験してみたいと考えています。
なお、山でパスタを茹でる際の最適な水の量について、パスタの量、茹で時間をパラメータにした式(標高の影響も含めて)を出そうと、現在検証中です。
以下の記事にまとめてあるこれまでのノウハウも見直して刷新する予定です!
・失敗しない山パスタ10のポイント
・富士山頂で山パスタは可能なのか?
・山パスタの課題
・【実験】マ・マー早ゆで3分パスタで茹で汁を残さない最適な水の量
・【実験】ポケットストーブとメスティンでパスタを茹でる。最適な水の量は?
もうしばらくお待ちください。