
はじめての味噌づくりは乾燥麹を使いましたが、本格的な自家製味噌を作るには「麹から作ってみたい!」という思いがありました。
が、いろいろと道具も揃えなければならない点、数日間拘束されるらしいという点、温度管理が難しく素人が作ると失敗することも多い?などなど、漠然とではありますがとてもハードルが高いような気がしていました。
実際に作ってみて思うのは、半分は合ってますが、半分違っているかもしれません。特に冬の麹づくりにはいろいろな道具が必要になるのは事実ですし、温度管理の難しさ、不定期に何度も作業が発生する点などやっかいなところもありますが、工程自体は難しい技術が必要なわけでもなく、必ずしも数日間ずっと拘束されるわけでもなく、道具もだいたいは家であるものでなんとかなります。
というわけで、具体的に麹作りにはどういう道具、材料が必要で、どういう工程でどのくらいの期間、手間がかかるのか?米麹作りの準備・計画です。
米麹作りの指南書
米麹づくりでは主に「わが家でつくるこだわり麹」(永田十蔵著)を参考にさせていただきました。本著は麹づくりのすばらしい指南書なのですが、残念ながら絶版になっております。図書館で借りる、中古品を探す等で読む手段はあるとは思います。
同著者の「誰でもできる手づくり味噌」もおすすめです。こちらにも麹づくりについて説明があるので参考になると思います。
米麹作りの計画

米麹作りというのは、蒸した米に麹菌を付け(種付け)、丸2日間くらいかけて麹菌を育てて米に麹菌を繁殖させていく作業です。料理というより生き物を飼ったり植物を育てる行為に近いと思います。
必ずしも付きっきりで作業しなければならないわけではありませんが、大まかな工程を把握した上で、スケジュールを立てておいたほうがよいと思います。
【1日目】
朝:工程1.米を洗い水に浸す(約24時間)
昼:ー
夜:ー
【2日目】
朝:工程2.米を蒸す(約1時間)
昼:工程3.米に麹菌を付け、工程4.麹菌の育成開始(48時間前後、30-40度に温度管理)
夜:ー
【3日目】
朝:工程5.一回目の手入れ
昼:工程6.二回目の手入れ
夜:工程7.三回目の手入れ
【4日目】
朝:ー
昼:工程8.麹完成!
大きく分けると(1)お米を蒸す工程と(2)麹を育てる工程になります。
(1)お米を蒸す工程:工程1~工程2
(2)麹を育てる工程:工程3~工程8
各工程の作業時間そのものは、それほど時間はかかりません。工程2でお米を蒸すのに1時間くらいかかりますが、3日目の工程5,6,7の手入れ作業などは、数分程度のものです。
そして麹の肝となる作業は工程4以降になります。肝であり最も難しい作業がここから約48時間続きます。というのも、工程4以降の作業は、何時間経過したから次の工程へ進むというわけにはいかないのです。作業が発生するタイミングがいつくるかわからないという状態です。なぜでしょう?
これは作業の発生タイミングが「麹の温度」によって決まるからです。チョコレートを溶かして固めるときのテンパリング作業のように温度を管理しつつ、40度になったら次の工程、35度になったら次の工程というように作業をすすめなければならないのです。数分で温度が変化して次の作業というのであればまだマシですが、数時間単位で温度が変化しそれが48時間続くとなるとかなりハードと言わざるをえません・・・米麹づくり、やっぱり過酷です;;
ここまで読んでみて、ちょっとおもしろいかも!?とか大変そうだけど挑戦してみたい!と思ってしまったあなた!そんなあなたは私と思考が似ているかもしれませんw(^ᴗ^)
しかしあまり難しく考えすぎるのも考えもの。まずはやってみて、失敗したら失敗したで、きっとそこから次へとつながるいろいろなことを学べるでしょう(失敗はしたくありませんが・・・)。
というわけで、具体的に準備を進めていきます。
道具の準備
米麹づくりでは普段の料理では使うことのないものがいくつか必要になります。だいたいのものは家にあるものでなんとかなりますし、新しく買い揃えなければならないものがあっても、決して高いものはありませんので安心してください。
大きくは、お米を蒸すのに必要なものと、麹をお米に繁殖させて育てるために必要なものになります。ちなみに作業するのは冬を想定しています。
それぞれの工程で必要なものをあげていきます。
(1)米を蒸す工程

- 蒸し器
- 蒸し布
- 大きなボウル
- ザル大・小
【蒸し器】
お米を蒸すのに使用します。鍋と100均の蒸し器用の台でも可。どうしても蒸し器がない(あるいは使いたくない)場合は、炊飯器で米を炊いてもよいです。その場合はお米がべちゃっとならないように普段より8%くらい水分を少なくして炊きます。
【蒸し布】
お米を蒸すのに使用します。手ぬぐい、白い布巾などで代用可、100均にもあります。
【大きなボウル】
米を水に浸す用です。ボウルでなくても、大きな鍋、桶のようなもので問題ありません。
【ザル大、小】
お米を洗うとき、水を切るとき、大豆の煮汁を切るときなどに使用します。
(2)麹を育てる工程

麹を育てるのに必要なのは適切な温度、湿度、酸素です。これらを管理するために次のようなものが必要になります。
- 麹箱
- 麹蓋
- 保温材
- 加温器
- 清潔な布
- 温度計
- 茶こし
- うちわ
麹箱、麹蓋という耳慣れない道具があがっていますが、まずこれらについて説明します。
本来麹は、温度が調整された麹室(こうじむろ)と呼ばれる専用の部屋で育てて製造します。麹室では麹を麹蓋に入れて管理します。麹蓋とは木製のトレイのようなケースです。この浅いトレイの中に保管し、温度が上がってきたら麹をほぐし混ぜ合わせて手入れをし、温度を管理しながら麹を育てます。
このような麹専用の部屋を用意したりするはなかなか難しいことだと思いますが、比較的安価な代用品を用意することで麹づくりは可能になります。
麹専用の部屋「麹室」を小さく扱いやすくしたものが「麹箱」です。この麹箱は麹にとって適切な温度に調整するための温度管理ケースです。
麹蓋は麹を入れておく入れ物であり、ここで麹をかき混ぜてほぐします。麹が入る十分な大きさで浅いトレイ状の木箱が適しており、麹箱に余裕を持って入る大きさものがベストです。木箱ではなくプラスチック製のものでもよいようです。今回はちょうどよい大きさのトレイがみつからなかったため、麹箱に入る麹の「入れ物」と、麹を混ぜてほぐすことができる「場所」を分けて用意しました。詳細は後述します。
目的・役割に沿っているものであれば、自分が持っているもの、手に入りやすいものでいろいろと代用できると思います。
では、具体的にみていきましょう。
【麹箱】
麹を作るために温度を管理するための箱、「温度管理ケース」です。
要は麹の温度管理をする際の入れ物です。このケースに、麹を入れた麹蓋(トレイや米袋など)、加温器(電気毛布、電気あんかなど)、保温材(毛布など)を入れることになりますので、それらが入る大きさのものということになります。
保温することが目的なので、密閉できる必要はありません。きちんとした蓋がないものでも何かをかぶせるなどして温度を保てればよいのでダンボールなどでもよいですし、暖かい場所であれば箱すらもいらないかもしれません。
私はプラスチックの蓋付き収納ケース(50*39*17cm)を使用しました。ホームセンターで500円くらいで購入し、洗剤でよく洗いました。

【麹蓋】
麹を入れておく入れ物であり、ここで麹をかき混ぜてほぐします。
浅くて大きなトレイが適しているのですが、麹箱として用意した収納ケースに入る適当な大きさのトレイが見つからなかったため、紙の米袋に入れて管理することにしました。
電気毛布などで加温するのにも袋状のものが適していおり、農家の方などはよく米袋を使用して麹づくりをされているようです。米袋は耐久性が高く、通気性があり、水分を吸ってくれるので、麹づくりに適しているのだと思います。
私は10kg用のものをホームセンターで数十円で購入しました。
amazonなどネットでも手に入りますが、送料が高く付いてしまうと思います。
また、麹を混ぜ合わせほぐす場所として、園芸用の大きめの育苗箱をホームセンターで100円くらいで購入しました。ここで布の上に麹を広げて、麹を混ぜたりほぐしたりする作業を行います。

この育苗箱が収納ケースに入る大きさであれば育苗箱ごと収納ケースに入れて管理してOKです。今回はギリギリ入らなかったため、収納ケースに入れる際は米袋、麹を混ぜたりほぐしたりする作業は育苗箱で、という形にしました。
また、麹を混ぜ合わせる場所としては網状になっている必要はありません。トレイではなくアルコール消毒したテーブルの上などで作業をしても問題ありません。
【清潔な布】
麹を包むのに使用し、この布を育苗箱に敷いて麹を広げ麹を混ぜたりほぐしたりします。清潔で余裕のある大きさがよいです。
私は100均で購入したはぎれ布を使用しました。
【加温器】
冬に48時間連続して麹の温度を30-40度に保つ、ということを想定して用意します。
最初は湯たんぽや豆炭あんかを使用しようかとも思いましたが、48時間連続ということを考えると、電気毛布、電気あんか、こたつ、ペット用カーペットなど電気を使用するものの方が作業効率がよいと思います。
基本的に家にあるものでいいと思います。私の場合は昨年amazonで購入した電気毛布があったのでこれを使いました。
【保温材】
加温器だけだと温度が高くなりすぎたりしてしまうので、温度を調整したり保温したりするために毛布などを使用します。保温、調整用と考えてください。
私は最初は寝袋を使用したのですが、途中で麹の水分でびっしょりになってしまったので毛布に替えました。
【温度計】
麹づくりの要は温度管理なので、温度計は必須道具と言えます。
温度を測る対象は麹です。いちいち温度管理ケース(麹箱)を開けて、米袋から布に包まれた麹を取り出して温度を測るというのは面倒なので、箱の外から温度が見れる状態にしておけるプローブ(ワイヤー)付きのデジタル温度計が便利です。
もう一つ、温度アラーム機能が付いているとなおよいと思います。麹づくりでは麹の温度が何度なったら手入れを行うという作業になるため、アラームで教えてくれると、付きってきりで温度を見ておく必要がなくなります。(といってもアラームが聞こえる範囲にいる必要はありますが)
麹のためだけではなく料理にも使用できるキッチン温度計ので、無駄な出費ではないかなと思いamazonで新規に購入しました。
【その他】

以下なくても問題ないですが、あるといいかなと思うもの。
・茶こし:種麹を米にふりかけるときに使用。なくてもなんとかなりますが、種麹を全体にまんべんなくふりかけるのにいい。
・しゃもじ:種麹をふりかけてたと、混ぜ合わせるのに使用。手でも問題ありません。
・うちわ:蒸した米を冷ましたり、麹の温度があがりすぎてしまったときに、うちわで必死にあおぎました。あったほうがいいかなと思います。
まとめ:私が使用した道具一覧

- 蒸し器
- 蒸し布
- 大きなボウル
- ザル大・小
- プラスチックの収納ケース(50*39*17cm)
- 米袋(10kg)
- さらし布
- 育苗箱(50*36*8cm)
- 毛布、寝袋
- 電気毛布
- プローブ付きデジタル温度計
- 茶こし
- しゃもじ
- うちわ
これらは私が麹づくりに用意したものであり、すべて必須というわけではありません。一例と捉えてください。大事なのは温度、湿度が適切に管理できることなので、例えば加温器としてこたつを使う場合は、こたつ自体がケースのような役割になるので、温度管理ケースは必要ないと思います。自分なりのアイディアで道具を考えてみるのも楽しいです。
材料の準備
次に材料の準備です。米麹の材料は以下のたったの3つです。
・米 作りたい分量
・米麹用種麹 米1kgで2-3g
・水 適量
出来上がる米麹の量は、米の重さ*1.1~1.2倍くらいです。1つ1つみていきましょう。
【米】

もち米ではなくうるち米(ごはんを炊くときの米)です。
必ずしも美味しいお米がいいというわけではなく魚沼産とか高いお米を使用する必要はないそうです。米を蒸したときにべたつきが少ないお米が麹づくりには向いているとのこと。「わが家でつくるこだわり麹」では「きらら397」がおすすめされていました。
【米麹用種麹】
用途によって様々な種類の種麹があるので目的に合ったものを用意します。今回はもちろん米麹用の種麹を。これはネットで購入できます。
量は米1kgに対して1gとか2gとか言われています。少し多めの方が麹菌が繁殖しやすく素人にはいいそうなので、1kgで3g使っても問題ないようです。
余った種麹の保管について、購入した麹屋さんにお聞きしたところ、しっかり封をしなおして冷蔵庫に保存でよいそうです。少し菌力が落ちるが1年後でも使用できると。
【水】
きれいな水を用意します。米麹の16%くらいはお米が吸収した水分、米麹を構成する大事な要素の1つになります。せっかくの自分で作る米麹ですから、水にもこだわってみてもいいかもしれませんね。もちろん水道水でもちゃんと作れます。
私は地元の湧水「日吉神社穀水」を汲んできました。
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ソライロノート
普段の料理では使わないような小道具がいろいろ必要になり、何かの実験をするみたいな感じになってきました。道具も揃ってくるとテンションも上がってきます!早く麹づくりにとり掛かりたいところです。
ちなみに今回は「味噌作りのための米麹を冬に作る」ことが前提です。
条件が変われば必要な道具も変わってきます。夏なら保温ケース、加温器、毛布など必ずしも必要ありませんのでご注意ください。
次はいよいよ実際に米麹を作ってみます。
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