※ソライロ遍路53日間の全貌、ツイートしきれなかった部分も余すところなく織り込んでます。
4月6日、お遍路16日目その2。
天気もよく気持ちのよい海岸沿いの道を歩いた後、海を離れ内陸側に入っていく。徳島から延々と続いてきた国道55号線歩きが終わった。
16日目その1はこちら。
長く苦しかった国道55号線が終わる
少年
二十八番札所大日寺まではあと2キロくらい。自分としては早めのペースで歩いてきたので少し疲れが出てきた。この感じなら時間的には間に合いそうなのでちょっとペースを緩める。
龍馬歴史館というテーマパークのような場所があり、入口の前で少しだけ休む。ここは龍馬や幕末の志士たちの蝋人形が120体あり、蝋人形で歴史的場面を再現しているとか。面白そうなので時間があれば見れみたかった。
足はだいぶ重くなってきていて、ペースも遅くなってきた。少し余裕があるかなと思っていた時間も、このままだとギリギリ間に合うかどうかになってしまった。ペースを上げる力が湧いてこない。
ランドセルを背負っている子供の集団が通り、あいさつをしてくれる。少し元気がもらえた。
あと1キロちょいくらいまで来ていたがもう4時半を回っていた。
後ろから歩いてきた黒いランドセルの子に追いつかれる。「こんにちは」と声をかけたが、何やら小声でしゃべりながら一人遊びをしているような感じで、僕を追い抜いていった。
僕の歩くペースはだいぶ落ちていたので、少年とは少しずつ差がついていった。子供に差を付けられていくのを自分でも情けなく思い、彼を目標にして、なんとか離れないようにと歩く。それでも次第に離されていく。
彼の風貌がどことなくお寺の弘法大師像の姿に似ているような気がして「少年お大師様みたいだ」なんて思いながらなんとなく目で追っていた。姿はまだぎりぎり見えている。まるで早く付いてこい、急がないと間に合わないぞと言われているような気になり、がんばって歩いた。
だいぶ先の方にいた少年が、突然立ち止まる歩道の左にある手すりを触っているのが見えた。「何をしているんだろう?」と不思議に思う。いったん進んでまた戻ってきて手すりを触っている。ふとこちらを向きジャンプした。
まるでこっちみて!ここにあるよ!と誰かに教えているようだった。
遊んでるのかな?
あそこに何かあるんだろうか?
とても気になってそこに何があるのか確かめてみたくなった。
やがて少年は先に進み見えなくなった。
しばらくてその場所にたどり着き、左の手すり見てみる。
思わずハッとした。
そこには遍路道の方向を表す矢印マークが貼ってあった。道を渡った右側を指していた。よくみるとそこに登り口がある。
とても小さなマークだった。右側の登り口もあまり目立たない。急いで歩いていたのもあるし、あの少年があんな風にこの場所を注目させてくれなかったら見過ごして可能性が高い。もしかして僕に教えるためにあんなことをしてくれたのだろうか、、、
不思議な気持ちになり、しばらく立ち止まってしまったが先を急いでいることを思い出し、矢印の方向に進んだ。
二十八番札所大日寺
坂道を息を切らしながら登り、なんとか17時前に大日寺にたどり着くことができた。
普通はお参りをしてから最後に納経するのだが、時間がなかったので先に納経させていただく。飲み物のお接待もいただく。
六角堂。
本堂。
大師堂。
お参りを終え、お寺のベンチでようやく一息入れることができた。
寝床探し
あとは今日の寝床を探さなければ、、。この後、天気が崩れて雨になるらしい。テントがあるとはいえ、できることなら屋根のある場所を確保したい。
来る時に「県立青少年センター」の看板があったのを思い出した。地図を確認するとここから近い。もしかしたらいいかもと思い行ってみることにした。
ナイター照明の中、高校生くらいの子たちが野球の練習していた。ベンチに座り練習を眺めながらしばし休憩。スペースはいくらもありそうだっが、施設内で野宿するには許可がいるだろう。職員の人は、もう帰ってしまっているのか見当たらない。
ちょっと難しそうだなぁ、、。辺りはどんどん暗くなっているので、いつまでも時間を潰している暇はない。別の場所を探すことにする。
他によさそうな場所がないか、地図を見て一人作戦会議。近くに川が流れていて橋があるようだ。河原や橋の下は可能性ありだ。川の手前に小さな山があり神社がいくつかある。そのあたりで探してみるのもいいかもしれない。
まずは1番近い大山神社に行ってみる。周りに多少のスペースはあったが、民家のすぐ横だしちょっと野宿には適さないだろう。
川の堤防沿いの道に出てみる。道沿いにお地蔵さんの祠があり、横にベンチがあった。テント一張りくらいのスペースもあるが、屋根はない。雨の中、こんなところでテントを張るのはできれば避けたい。どうしてもみつからなかったら、ここにするしかないか、、。
もう19時近く、だいぶ闇が深くなってきた。早くテントの中に入り落ち着きたいが、ここならいいだろうと思える場所がなかなかない。
川沿いを進み戸板島橋のところまで来た。橋の真下は道になっていて普通に地元の方が歩いている。これだとテントは張りづらい。川を渡った向こう側のほうがいいかもしれないが、橋を渡るにはぐるっと回らないと道が続いていない。そこまで歩くのがとても面倒に感じてしまう。ふと奥の田んぼの土手のあたりに目を向けると、ここも橋の下になっているので雨が完全に防げそうだし、人目にもつかなそうなだった。うん、ここならいいだろう。今日の寝床決定だ。
ちょうど雨がぽつぽつ降り始めていたが、雨を完全に防げる場所だったので、荷物も体も濡らすことなくテントを張ることができた。
夕飯
かなり疲れていたので夕飯は簡単に済ませたい!となるとやっぱりカレーだろう。
ルウがちょっと足りない感じだったので、あるものを足してみた。というわけで、ポタージュスープの素を使ったクリーミーポタージュカレー。スープの素なら味は間違いない、美味しかった。納豆のせると更にうまい!
お遍路で食べた自炊遍路飯のレシピを紹介するシリーズ、今回は16日目の夕飯に作った「クリーミーポタージュ麦カレー」です。 [adcode] 材料 ・押麦 1合・水 1.8カップ(麦[…]
出納帳
トマトリーまん 200円
お賽銭 20円
納経代 300円
【集計】
宿泊費:0円
風呂:0円
洗濯:0円
食費:200円
日用品:0円
お参り:320円
合計:520円
ルート
・ルート:7:02カリヨン広場-9:25赤野休憩所9:35-10:07栗山映子さんの接待所10:20-11:05琴ヶ浜の海岸(昼飯)11:45-12:45ウェルプラザ洋寿荘12:50-13:42道の駅やす14:00-14:41ヘンロ小屋香我美14:45-16:47二十八番札所大日寺17:15-19:04戸板島橋の下(泊)
・合計時間: 12時間9分
・合計距離: 30.53km
・最高点の標高: 85m
・最低点の標高: 1m
・累積標高(上り):323m
・累積標高(下り):293m
16日目GPS(ヤマレコ)
ソライロノート
自分としてはよく歩いた一日だった。寝床探しもいつもより苦戦したこともあり、体はかなり疲れていた。外はかなり激しく雨が降っているようだが、テントの中、しかも橋の下なので雨の音は全く気にならなかった。
寝袋に入りながら、あの少年のことを考えてみる。
足取り重く歩いている遍路の姿を見て、登り口を見逃さないようわざわざ教えてくれた寡黙な優しい少年だったのか、、、あるいはただの偶然だったのかはわからない。
今、自分がこうやって毎日食べて歩いて寝て起きて誰もいないような場所で野宿していることに、特に意味もなんてないだろう。でも、今日だけは今ここにいることに何か意味があるんじゃないだろうか、そんな気がしてならなかった。
とても不思議な気持ちで眠りについた。
17日目へ続く
【ソライロ遍路準備編】
【ソライロ遍路移動編】
0日目 沼津から四国に向けて、いざお遍路の地へ!
54日目 家に帰るまでがお遍路
【ソライロ遍路各県初日】
徳島編:1日目-1 ソライロ遍路スタート!
愛媛編:30日目-1 松尾峠を越え、第三の地伊予の国へ
香川編:46日目-2 やまじ風吹き荒れるなか六十六番札所雲辺寺、初めての通夜堂泊
【ソライロ遍路高知編】
11日目-1 朝から雨、徳島から高知へ入る
11日目-2 魔の55号線で大きな痛手
12日目-1 二十三番札所から三日目、食べても食べても力が入らず
12日目-2 フラフラになりながら室戸岬にたどり着く
13日目-1 高知初の札所に到達しyoutube仲間の陣中見舞い
13日目-2 道具と食材と体と心を整える
14日目-1 雨の中、二十六番札所金剛頂寺へ
14日目-2 田野町の温泉に入り、二十三士公園に野宿
15日目-1 真っ縦を登り二十七番札所神峯寺へ
15日目-2 真っ縦の登り返し後、温泉に入れず公園野宿
16日目-1 長く苦しかった国道55号線が終わる
16日目-2 少年の導き
17日目-1 雨の遍路みちを歩き、二十九番札所国分寺へ
17日目-2 三十番札所善楽寺から打ち戻り、一宮墓地公園へ
18日目-1 三十一番札所竹林寺~三十二番札所禅師峰寺
18日目-2 車救出後、種崎千松公園へ
19日目-1 浦戸大橋の一番高い所からの風景を眺め、三十三番札所雪蹊寺~三十四番札所清龍寺へ
19日目-2 三十五番札所清瀧寺後、窪地休憩所にて野宿
20日目-1 三十六番札所青龍寺
20日目-2 龍温泉に入り、ゆる~い一日に
21日目 浦ノ内湾の北岸を歩き、土佐市から須崎市へ
22日目-1 焼坂峠を越え中土佐町へ
22日目-2 添蚯蚓遍路道を歩き四万十町へ
23日目-1 三十七番札所岩本寺から水車亭でスイーツ休憩
23日目-2 猿田彦神社に寄り道し、土佐佐賀温泉こぶしのさとへ
24日目-1 熊井隧道を抜け、再び高知の美しい海へ
24日目-2 ベテランお遍路に叱られ凹みつつ、ゴルフ場に泊まる
25日目-1 四万十ブルーに見惚れ、10年後に思いを馳せる
25日目-2 下ノ加江海岸で初めての砂浜野宿
25日目-3 その夜
26日目-1 足摺岬へ向かう途中、以布利港でジンベイザメに出会った
26日目-2 四国最南端足摺岬へ
27日目-1 足摺半島をぐるっと周り、中浜万次郎生家に寄り道
27日目-2 足摺半島西岸を歩き、バス待合所で野宿
28日目-1 食料計画が崩れる
28日目-2 雨の月山詣でと命の梅干し
29日目-1 宿毛の遍路小屋であやしげな老人に出会う
29日目-2 デポ作戦を決行し、高知最後の札所へ